この記事はWathematica Advent Calendar 2021の21日目の記事です!
Wathematica Advent Calendar 2021
こんにちは、えぽぱかです。
今回は自分が学習したいと思っている人工言語であるロジバンについて紹介していきたいと思います!
みなさん人工言語と聞いて何を思い浮かべますか?
とりあえず「エスペラント」という言語は聞いたことがあるかもしれません。エスペラントは眼科医のザメンホフさんという人が共通の母語を持たない人たちの間で簡単に習得し使用できる言語として1880年代に創案した言語です。エスペラントは人工言語の中では一番メジャーな言語で、現在の話者数は100万人ほどいるそうです。
しかし、今回紹介する言語はエスペラントではなく表題の通りロジバンという言語です。
私自身ロジバンに関してほぼほぼ初心者レベルの知識しかありません(基本語彙を増やすのに苦労しています)が、私がロジバンという言語のどういった部分に惹かれたのかを説明していきたいと思います!(ロジバンを学習してみたいと少しでも思ってくれたらうれしいです)
早速ロジバンの興味を惹く点を大きく3つに分けて見ていきましょう。
文化的に中立な設計
ロジバンが目指す目標の一つに文化中立性の実現があります。
まずロジバンには公式で定められた文字が存在しません。 ロジバンは一つの文に対する発音が一意的に定まるようにできていますが、その際にどういう文字を使用するかは決まっていないのです。そのため、自作の文字を制作して発表する人もいます。
ただ、実際には「’ . a b c d e f g i j k l m n o p r s t u v x y z」というASCII文字を使うのがデファクトスタンダードになっています。
だいぶ欧米っぽい価値観が入っている感じがしますが、ASCII文字はコンピュータで最もよく使われる文字であるためロジバン文の構文解析が容易になります。
また今回の記事では発音について詳しく扱いませんが、ASCII文字を使う場合とりあえずローマ字読みっぽく考えておけばよいです。
ロジバンには他にも男女の区別を直接示す代名詞が存在しなかったり、単数や複数の区別も必須でなかったりします。
また、ロジバンの基本語彙は英語、中国語、ロシア語、スペイン語、ヒンディー語、アラビア語という制作当時話者数の多かった5言語における単語の発音をうまく融合する特殊なアルゴリズムを使って生成されています。
Wikipediaにある例をそのまま使用しますが、たとえばロジバンで「お腹」を表す「betfu」という単語は中国語の「腹/fù」、英語の「belly」、ヒンディー語の「पेट/peta」、スペイン語の「vientre」、ロシア語の「живот/jivot」、アラビア語の「بطن/batn」という単語から合成されます。
このようにしてロジバンの語彙は世界中の様々な文化圏の人にとって語の認識が少しでも容易になるように設計されているのです。
以上のようにロジバンの根本は文化中立的であるように規定されています。ロジバンそのものが生み出す文化は、こういった言語設計の上で話者の文化的背景が少しずつ混じり合いながら成立しているのでしょう。
論理的でシンプルな文法
ロジバンは述語論理を文法の基盤としており、だいたいの文は述語と項の組み合わせによって作ることができると考えます。
特に平叙文については「何がどうする/どうである」といった構造が成り立っており、「何」の部分を項、「どうする/どうである」の部分を述語と考えます。
この考えによってロジバンの文法構造はシンプルなものになっています。例を見ていきましょう。
1.私は猫を愛している。 2.私は彼の娘である。 3.鳥はおいしい。
これらの3つの文の述語と項はそれぞれ何になるでしょうか?
1の文ですが、述語は「愛している」、項は「私」、「猫」となります。
ロジバンにおいて述語の「愛している」は次のように定義されます。
x1 prami x2: x1はx2を愛している
あらかじめ入るべき項が述語の定義の中に記述されているのです。
よってx1には「私」という項、x2には「猫」という項が入ることになります。
ではロジバンにおいて「私」と「猫」という項はどう定義されているか見ていきましょう。
mi: 私
これが「私」の定義です。では「猫」の定義はどうでしょうか?
実はロジバンでは「猫である」という述語で定義されているのです。
mlatu: x1はx2(種類)というネコ科動物である
それでは 「猫」という項を表現したい場合どうすればよいか というと述語を「lo」と「ku」で挟むのです。そうすることで「述語のx1にあてはまる項」という意味になります。
よって「lo mlatu ku」とすることで「mlatuのx1にあてはまる項」、つまり「猫」を表現できるのです!
したがって「私は猫を愛している」のロジバン訳は
mi prami lo mlatu ku
となります。
次に2番の文を見ていきましょう。述語は「娘である」、項は「私」と「彼」ですね。
ロジバンで「彼」は
ra: 彼、彼女、それ (複数人でもよい)
と定義され、「娘である」という述語は
tixnu: x1はx2(親)の娘である
と定義されます。よって「私は彼の娘です」のロジバン訳は
mi tixnu ra
となります。
次に3番の文です。「おいしい」が述語で、「鳥」が項となります。
ロジバンで「鳥である」という述語は
cipni: x1はx2(種類)のトリ綱である
と定義され、「おいしい」という述語は
kukte: x1はx2にとっておいしい
と定義されます。よって「鳥はおいしい」のロジバン訳は
lo cipni ku kukte
となります。いま述語のkukteのx2には何の項も入っていないように見えますが、文脈上明らかであったり重要でない「何か」という項が入っているとみなします。
以上のように項と述語で文を表現できました。
日本語などにあった動詞、名詞、形容詞といった概念が削ぎ落とされシンプルになっています。
では述語論理では問題にしていなかった時制や受動態、疑問文、命令文などはロジバンにはないのでしょうか?
もちろん存在していて、簡単に表現できます!
ここでは過去形の表現のみ紹介しますが、これは述語の前に「pu」を置くだけです!たとえば「私は猫を愛していた」であったら
mi pu prami lo mlatu ku
と表現できます!
さらに、こうして表現されたロジバンの文はアクセントを込めた発話で一意的に構文を解釈できるのです!
また、語順を自由に変えたりするための表現も備えており、人が聞いてすぐに意味を理解しやすいような表現を模索することも可能です。
詩や物語など創造的で感情的な表現もできる
ロジバンは論理的な言語であると言いましたが、これは感情表現が充実していないことを意味しません。
構文の解釈は一意に定まるのに、曖昧な意味を込めることも許容できるのです!
ほんの一例として、ロジバンには心態詞という語が用意されており、絵文字を発音するような感覚で感情も表現できます!
たとえば「.iu」という心態詞は「愛好」の感情を表現し、
mi prami lo mlatu ku .iu
は「わたし猫ちゃん好きー!」みたいなニュアンスを作れます。
ロジバンを学ぶと他にも色々なことが表現できそうなことがわかります。実際、ロジバンで俳句などの韻文を作った人もいたりするそうです!
おわりに
色々とロジバンについて説明しましたが、正直ロジバンの魅力はまだまだ全然語れていません!
興味を持ってくれた方はここから少しずつロジバンを学習していってみてほしいです。
そう言われてもどう学べばいいのかということですが、ロジバンでは日本語で書かれた充実した入門サイトなどがたくさんあります!
その中でも、
というサイトは入門に非常に最適だと思います!
語彙はさておきロジバンの文法をふわっとつまんでさらなる魅力を感じてもらうのが最初はいいと思います!
いかがでしたか?これにて今回の記事を締めたいと思います!ありがとうございました!
参考文献
- ponjbogri, “ロジバン大全: The Complete Lojban Language 日本語抄訳,” [オンライン]. Available: http://ponjbogri.github.io/cll-ja/.
- N. Nicholas , J. Cowan, “What Is Lojban?,” [オンライン]. Available: https://lojban.org/publications/level0/brochure/book1.html.
- Wikipedia, “ロジバン,” [オンライン]. Available: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%90%E3%83%B3. [アクセス日: 20 12 2021].
- cogas, “はじめてのロジバン第2版,” [オンライン]. Available: https://cogas.github.io/hajiloji/.